店長のお散歩日記
◎豆本
私は、本は読むことより、本の作りが好きだったのです。
特に、上製本仕上げの「背中が丸背」の本が。
どうやって出来てるのは知りたくて、上製本仕上げの、手持ちの本をばらし、何冊も潰してました。
ハウツウ本を買って挑戦すれば楽に済む事なんですが、遠回りが好きな性格に生まれたようです。
少し時間に余裕が出来た50才台に、好きな上製本作りの準備を、と思い。。。。
しかし、いきなりB5判、A4判サイズの上製本は無茶な事だと悟り、先ずは手の平に乗るような小さな本を
作りました。我ながらビックリするほど良く出来ました。
3,5cm×4cm100頁の物を作りました。
これは売れる!!と。
大工をやめて海文舎を手伝ってくれてた親父に、ガレージの一部をベニヤ板で囲ってもらい、部屋を造り
そこに小さな台を置いて「布表紙の豆本」として並べたら、当時としては、珍し豆本は、飛ぶように売れました。
本体の糊付け作業が、手作業では捗らないので、製本機で大量に作りました。
ここに落とし穴がありました。
中の紙が取れてしまう!!大クレームを浴びました。
あれから10年、今でも、ご近所の方は、海文舎の豆本は信用されてません(涙。。。笑)
手作りあれ、製本機であれ、基本的に作り方が間違っていたのです。
和風の生地を表紙に。。。大人気でしたが、中身が抜け落ちては話しになりません。
紙を二つ折りして、重ねて糊をする事を知らなかったのです。
それから2年間豆本作りの空白期間がありました。
その期間はミニ5穴バインダー手帖をガレージ店に並べてながら豆本の事を考えていました。
その頃は私一人で、アフター5の時間で考えていました。
二つ折りた物を重ねて糊をすれば抜け落ちない事はわかったのですが、小さな豆本を柔軟に開いてくれる
柔軟な糊が見つからないのです。
話しが長くなってしまいます。。。河岡さんに長い!!!お前の足に合わせろ!!と言われそうです(笑)
ある年の年末、初めてのお客様が喪中の葉書を頼みにきました。
ふと何気なしに糊の話をしたら、箱作の会社に勤めてるその人が、今度持って来て上げると。
約束通り彼は持って来てくれました。
見た目、普通の糊じゃないか!と私は、そのまま使わずに地下にほったらかしにした何日か過ぎた有る日
その糊は固まっているのですが、引っ張ると千切れもせずガムの様に延びたのです!
これだ!!!この糊を本の背中に付けると、取れないし、本のノド奥まで柔軟に開く事が出来る!!
それから社員にも教え、また社員もそれぞれ自分のすきな分野の豆本を生み出してきました。
海文舎の豆本には全てこの糊を使ってます。
現在は海外の観光客様中心の豆本作りですが、大クレームをもらったご近所の方や学生さんも手にしたくなる
豆本作りをしなくては、と考えています。
本が好きになる様な、本作りに興味が持てるような「豆本」を。
お客様よりご要望がありました、鳥獣戯画豆折り本の「丙巻」がようやく完成いたしました。
前半は人間が登場、大人、子どもが囲碁やすごろくなどゲームを楽しむ様子が、
後半は動物戯画、主にカエルが主人公で人間の遊びを繰り広げています。 (「丙巻」シリーズの本文内容は全て同じです。表紙の図柄だけが違います)
畳んだ状態での表紙を含めたサイズはタテ約4.8cm×ヨコ約3.9cm×厚み約1.1cmの豆本ですが本文の全長はなんと約1m47cm。
本文はジャバラ折りで、1面の大きさが3.5cm×4cmで42面あります。 (手作りのため多少の誤差がでます)
表紙と裏表紙には綿の布プリに印刷した生地を使用しています。
本文の用紙には白に近いクリーム色のラフ書籍を使用しています。