◎最初で最後の”バレンタインデ-” 薄れ消えて行く記憶の中で

◎最初で最後の”バレンタインデ-” 薄れ消えて行く記憶の中で
80歳を迎えようと

してる小学校の恩師が

「もの忘れがいどくてこわい」

と電話口で話された。

自分は80にはまだ

兎歳の一回りがあるが

記憶が薄れて消えつつある。


半世紀前の

近江八幡駅の待合室の

長椅子で、二人は

乗るはずの電車を

1時間以上乗らずに

見送った。

彼女のカバンの中には

自分に手渡す

チョコレ-トがあった。

中々手渡しては呉れなかった。

これ以上待っていては

彼女の乗る近江鉄道の最終が

なくなる。

不機嫌を装って自分は

東海道線に飛び乗った。

自動ドアが閉まる瞬間に

ドアのすき間から

小さな包みが渡された。



火ノ浦久雄

UPしてます画像は
表紙に和紙を使ってる
「小倉百人一首」豆本
です。
詳しくはHPの商品欄へ。