ヨナ

とうちゃん!
死にそうな猫がいる!

それが始りでした。
小学生の娘が必死に訴えたるのに
親として教育上良くないと思い、格好だけでもいいからと付き合うかと。

畑の土手の横に無断駐車してる乗用車のところでにゃにゃと声が聞こえました。
車の下か、なら直ぐに捕まえられると、覗き込んでも、何処にも見えません。

どこだ!どこだ! 分からない。
車の下はまだエンジンの熱が残っていました。
四月七日とはいえまだ寒い日もある時期でした。

車の底を撫でるように指を当てたら、スポッと入るところがありました。
ジョイントです。前のエンジンの力を後ろの車輪につなげる、回転する
ジョイントの僅かな隙間にいたのです。

ひとつかみしたら、思い切り引っかかれました。
何とか逃げられないように強くにぎりました。

車の持ち主が、エンジンのキ-を入れた瞬間、ジョイントは回転して
子猫はこっぱ微塵、と思うと、家に入れたくなりました。

18才まで長生きしました。

最後 家内の部屋からよろよろと死に場所をさがして。
ヨナ!!と家内が叫びました。
ヨナはいつもの家内の布団によろよろと戻り、おしっこを垂れながら旅たちました。

大きくて、カッコいい黒は天井裏部屋の小さな細い踊り場で死んでいました。
いつも私の膝の上にのってくれてました。

かたくなりはじめた黒を抱きしめていました。
思い出すと涙が止まりません。

コロナ真っ最中の中、子猫がいるからと。
ちょこんとすわって、私が手を出しても逃げもしませんでした。
こんなやつはじめてや。と。
しかし 甘噛みのクセはまだなおりません。



夜中に↑コロを先頭にして大運動会を始めます。
床は傷だらけ、柱は爪とぎで、マリリンモンローの腰の様にくびれてます。

もう絶対猫は飼わない!!と言いながら「動物は何も言えないから」と家内。
私はただええ格好してるだけです。
(小さな声で、回りはわんちゃん好きで囲まれてます。笑い) 火ノ浦久雄