ちょっと いいことをした。

夕方5時になれば暑さも

ましになるだろうと、

昨日の分も取り戻そうと

出たものの一向に暑さは

衰えていない。

師団街道の信号で

立ち止まり、青を待っていたら

いきなり後ろから、20代後半と

思われる155㎝程の背丈の

女性が私を抜いて走りだした。

馬鹿な!このくそ暑い中を。

100m左先にパチンコ店はあるが

席取りを急ぐ時間帯ではない。

また そんな風に見える女性ではない。

横断歩道を半分渡った時

左目に京阪バスが目に入った。

そうか バスか!

パチンコ店の前にあるバス停に

彼女は急いでいるのだ。

しかし 横断道には私ひとり。

私がすんなりと横断歩道を

通り抜けたら、バスは訳もなく

必死に走る彼女に追い抜き、走り去る。

桐生選手がこの日も調子が良ければ

バス停まで9.98秒。

日本一100mが早い女子で

11秒切るか切らないかである。

これも間に合う。

しかし 彼女の後ろ姿からして

どうしても23秒はかかって

乗り遅れる事間違いない。

ならば、バスを堰き止める感じで

横断歩道の上で

何かを落として、拾い上げる

所作を僅かにをした。

横断歩道を渡り切った場所で

彼女の走る後ろ姿を

目で追っていた。

バスの前ドアが開き

彼女は吸い込まれる様に

バスの中に消えた。

(バスの後ろの大きな窓から
ありがとう!と彼女は大きく手を振った)

そんな昭和の映画もあったな。

火ノ浦久雄