◎山本周五太郎 作 『コロナ床屋』

◎山本周五太郎 作 『コロナ床屋』
 第1回 第1章

もはや これまでかと

海之助は腹を決めた。

イグサ畳を裏返し 目を閉じ坐りこんだ。

---父上 私が介錯いたします---

おぉー倅か 世話をかけてすまぬがたのむ。

左手に電動バリカン、そして右手に

100均切りバサミ。

手際よくばっさばっさと刈り込む倅

~なかなか手馴れたものじゃのう~

---お褒めのお言葉うれしゅうございます。

実は介錯のまえに、Youtubeなるもので

下調べをしてまいりました。父上完成です---

おお~さっぱりした。これで外に出れる。

>父上 すこしお待ちを>

どうした娘

<兄上様には申し分けなく存知ますが。。

その頭では、世間様に、ご近所様の。。>

どうしたと言うのじゃ。ゆうてみい。

<それは酒に悪酔いしたトラ刈り。。

いや コロナ刈りでございます。

どうかこの帽子をお召しください>

そうか、愛分かった。


火ノ浦久雄 訳