川柳句集『月のおと』『花のこゑ』
(海文舎)に寄せて
文藝としての川柳に触れたことがおありでしょうか?
俳句とおなじ17音から拡がることばの宇宙。
そこにはなにやら人間、その心のさまが香りたちます。心とは得体の知れない深遠な世界。それに挑む17音
が文藝として川柳です。
詠み手の送り出した17音。その限られた音には読み手が自由に関わることのできるあわいがあります。その
あわいで読み手が自由に心をゆらがせるといいのです。そして、そのゆがぎから読み手のなかでそれぞれの風
景を立ち上がらせます。あるいは、なにがしかの雰囲気を醸します。
読み手の数だけ味わい方がある。読み方の正解は、ない。それが川柳のよいところです。
送り出された川柳は、よき読み手と出遭うことでその完成を見ます。読み手と詠み手に通底するもの、そこに
なにかしらの響き合いがあるなら、その作品は読み手がそれぞれの鑑賞をすることで、読み手の中で完成をみ
るのです。
『月のおと』に耳を澄ませてみてください。
『花のこゑ』はあなたになにを語り掛けるでしょう。
海文舎さんが素敵な装幀で「おと」や「こゑ」をちいさな本に閉じ込めてくださいました。あなたがその表紙
を開いて、「おと」を、「こゑ」を世界に自由に放ってあげてください。
17音から拡がる宇宙。おたのしみいただけましたら幸いです。
川柳作家 茉莉亜まり